【ネタバレなし】生活保護がテーマの漫画『健康で文化的な最低限度の生活』を読んだ感想

【ネタバレなし】生活保護がテーマの漫画『健康で文化的な最低限度の生活』を読んだ感想

レイジです。

最近、ネットサーフィンをしていたら偶然面白い漫画を見つけました。

なんと、生活保護をテーマにした漫画です。

生活保護を題材にした小説とかないかな〜と思っていたら、まさか漫画があったとは驚きです。

先に申し上げておくと、生活保護受給者ではなく、生活保護ケースワーカーが主人公の漫画です。

ただ、両方の側面がしっかりと描かれているのでお互いの生活を知ることができます。

では早速、軽く概要を説明したのち、漫画を読んだ感想についてお話ししていきたいと思います。

健康で文化的な最低限度の生活/柏木ハルコ/著

概要

『健康で文化的な最低限度の生活』は、柏木ハルコ氏によって描かれた漫画です。小学館のビッグコミックスピリッツにて2014年18号から今もなお連載が続いております。

内容としては、新人ケースワーカーの目を通して生活保護のリアルに迫る青春群像劇となっています。

主人公は義経えみるちゃんです。性格はマイペースで頑張り屋。空気読めない。かわE。

↑画像は「アル」から持ってきました。

題名は皆さんお察しのように日本国憲法第25条第1項の条文「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」からまんま採られていますね。ここまで捻りがないのも珍しいです。

ちなみに結構マイナーな漫画かと思いきや、単行本の累計発行部数は100万部を突破しており、ドラマ化までされています。

どのような人に向いてる?

この漫画は、少なくとも万人受けする漫画ではありません。

というのも、テーマがテーマなだけに重い話がかなり多いです。

例えば、貧困、障害、暴力、犯罪、などなど。

そのため「明るい話しか読みたくない、暗い話はマジで苦手」って人には正直言って向いてないです。

また、生活保護を受けている方にもはっきり言っておすすめはしにくいです。

実際、僕も読んでいる間結構胸糞悪くなることがありました。漫画全体の三割くらいは胸糞悪かったです。

もちろんこれは作者さんが悪いとかそんな話ではなく、テーマが重いのでどうしてもこうならざるを得ないって感じですね。

生活保護を受けている方におすすめしたくない理由なのですが、かなりリアリティがある漫画なので、辛い境遇を経てきた方はどうしても漫画のキャラと自分が重なりあってしまうことがあります。

特に、うつ病や精神疾患を持っている方には尚更おすすめしにくいです。

もしかしたら、過去のトラウマを思い出し辛い気持ちになってしまうかもしれません。そのリスクを考えると、はっきり言って読まない方が良いと思います。

この漫画が向いている人は、メンタルが強い人、知識が欲しい人、福祉の世界を知りたい人、ケースワーカーや生活保護受給者の生活が気になる人です。

この漫画は作者が実際に取材した内容も多く含まれています。そのため、漫画で出てくる情報やストーリーには非常に信憑性があります。

以上を踏まえた上で、この先を読んでくれたら嬉しいです。漫画内ではショッキングな発言もあり、それもそのまま引用するので苦手な人はブラウザバック推奨です。

勉強になる

ケースワーカーや生活保護受給者にとっては勿論のこと、今の日本社会で生きる皆さんにとって非常に勉強になります。

生活保護法がバンバン出てくるのは当然のこと、生活保護法63条と78条の違いや、水際作戦、扶養照会、就労指導、通院交通費、移送費、意見書、不正受給への取り締まり、貧困ビジネス、シングルマザー、依存症、精神病、子供の貧困、はたまた法テラスの話まで出てきます。

生活保護に興味がない人からしたら何いっ天皇って感じでしょうが、これが凄いんです。

実際、僕がこの漫画で得た情報はたくさんあります。

扶養照会は最近になってルールが変わったため漫画内の情報とはちょっとズレてたり、「生活保護の申請は簡単には通らないよ!」みたいな感じで一部過剰に描かれていましたが、それ以外はマジでタメになりました。

まぁ漫画読んで生活保護申請する人バンバン増えたらアレですもんね( ´_ゝ`)

また、生活保護が基本申請主義であることも漫画内で語られています。ケースワーカーの裏事情も語られてるわけです。

これを見た時点で「あ、これガチの漫画だわ」ってなりました。

最近の話ではコロナ禍による受給者の自動車の一時的な所持を認めるシーンとかも出てきてマジで本格的です。

話が重すぎる

これがキツかったです。情報はタメになるんですが、ストーリーがマジで重すぎます。

自殺なんて当たり前に出てきますし、受給者差別や、受給者が自殺して負担が減ったことを喜ばしく思うケースワーカーも出てきます。障害や生まれ育った環境を呪う人も出てきます。

僕としては貧困家庭の話が一番キツかったです。何故なら、僕自身貧困家庭で育ったためですね。

漫画内では、貧困だけど性格が良い人間みたいなそれこそ理想的とも言えるよくありがちなキャラは全然出てきません。大体みんな性格悪いです。リアリティあるのです。

そのせいで、過去のことをいろいろ思い出して嫌な気分になりました・。・;

また、話にはだいたい救いがありません。

ハッピーエンドと言うよりかは、最底辺から底辺くらいのラインまで行って「俺たちの冒険はここからだ!」みたいな感じで一つの章が終わります。

決して「生活保護でも幸せになれるんです!」みたいな感じではなく、「生活保護でもせめて普通を目指そう!」みたいな感じなんです。

一般人からしたらエンタメとして楽しめるのでしょうが、当事者の僕のような受給者からしたら救いがない話です。

大してメンタルが弱いわけでもない僕でもキツイので、お豆腐メンタルの人が読んだら心を痛めてしまう可能性があります。

 

クソどうでも良い話なんですけどTwitterで「お豆腐メンタル」のことを「絹ごしメンタル」って呼んでるおじさんいて面白かったです

働くことを美化している

ストーリーが「受給者はとにかく働くべきだよね」「低賃金でも働くことは美しいよね」って感じなのもキツかったです。何故かって?僕が働いていないからですね^^;

具体的には、社会復帰と称し受給者がアルバイトを始めたところでその章が終わったり、障がい者が作業所で働いて「良い仕事見つけたぁ〜!」みたいなことやってたりしてたのがキツかったです。

漫画だから仕方ないのかもしれませんが、現実ではアルバイトを頑張って保護を抜けたところで生活が苦しいのには変わりありませんし、作業所なんて国公認の貧困ビジネスです。

そして、これをもしリアルで生活保護を受給している方が読むと、もしかしたら「やっぱり急いで社会復帰しないと…」みたいな感じで急かされている気分になってしまうかもしれません。

合理的に考えれば、明確なプランでもない限り「とりあえず働く」というのは今の日本では絶対してはいけません。

そんなことをすればブラック企業が蔓延するだけですし、なんと言っても働いている人自身の心身が壊れてしまう可能性があります。

それだけ、今の日本の労働環境はおかしいのです。新卒公務員の手取りが18万くらいで生活保護受給者が月に13万くらい貰えるのを考えれば労働がイカれていることに気付くはずです。

総合的に見ると面白い

不幸なシーンがバンバンぶち込まれてきてキツイところはあるんですが、総合的に見ると面白いと思います。

生活保護の漫画というのはめちゃくちゃ異質です。

しかも、なんちゃって生活保護漫画ではなく、かなり本格的なのが高評価です。ストーリーの出来は勿論のこと、知識の提供がマジで素晴らしいです。

世間一般が生活保護について勘違いしてそうなところ(パチンコや酒とか)もしっかりと留意されていますし、かといって浅い知識ばかりかというとそうではなく、法テラスの話のようなほとんどの人が知らないであろう話も出てきます。

生活保護受給者のタイプも述べられており、傲慢な受給者、真面目な受給者と偏見がないように綺麗に分けて描かれています。

特に傲慢な受給者が来るとケースワーカーが毎回盛り上がるのが良いです。

生活保護をよく知らない人からすると、どんな受給者が害悪なのか判別が難しいかもしれません。下手したら受給者は全員悪いやつみたいに思ってるケースもあることでしょう。

しかし、こうやって書き分けると「ああいう態度や言動を取る人間はやばいんだな。受給者が全員悪い人なわけではないのだな」と伝わりやすいです。

僕自身こうして社会問題を漫画で勉強したのは初めてですし、受給者としてケースワーカーの様子が知れたのもとても大きいです。

今まで、僕は「ケースワーカーは怠慢な人しかいないんだろう。家具什器費のこと教えてくれなかったし。」みたいに思っていたのですが、これを見ると決してそうではなく、公務員である以上、上からの命令で動けないだけでアクティブで他人思いの人も多く存在することがわかりました。あくまでフィクションなので確信を持っては言えませんがね(^O^)

もしこのブログを読んでるケースワーカーの方がいましたら、お詫び申し上げます。今まで誤解しててすみませんでした;。;

兎にも角にも、こうして「難しそう、めんどくさそう」と言った社会問題を漫画で楽しく(?)勉強できるのは素晴らしいです。

また、僕自身生活保護受給者であるため楽しめる要素が多いってのもあると思います。

特に貧困ビジネスの話ではテンションが上がりました。というのも僕自身貧困ビジネスに巻き込まれているからです。まぁあと二日で引っ越しするんですけど。。。

ただ、この漫画を読むと僕がやられている貧困ビジネスはまだ良心的なんだなって思います。本当の貧困ビジネスは衣食住なんてあってないようなもんらしいです。皆さんも無料低額宿泊所はなるべく避けるようにしましょう。

まとめ

かなり人を選ぶ漫画なのは間違いないですが、生活保護の知識としてはこれほど簡単に詰め込めるものはないと言っても過言ではありません。

特に「生活保護法の言い回しが長くて何言ってるのかわからない」みたいな方は一度読んでみるのがおすすめです。メンタル弱い受給者以外は基本読んだ方が良いと思います。

あと、これ言うと批判くらいそうなんですけど主人公と僕、性格が結構似てるなぁ〜って思いました。僕も仮にケースワーカーになったら上司の言いつけとか無視して好き勝手動いてみたいです。

もしこの記事を読んで漫画を読みたくなった方がいましたら、中古ではあんま安く売られてなかったので電子書籍で読むのがおすすめです。

これからこの漫画がもっと有名になって、多くの人に生活保護のことを知っていただけたら嬉しい限りです。マスコミの悪質な情報をぶっ潰してほしいですね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。